
松枯れを起こす真犯人

- 現在の急激な松枯れは、ほとんどがマツノマダラカミキリを媒介者とした、 マツノザイセンチュウという線虫が引き起こしています。 一般に「松枯れ」と言われていますが、正しくは「マツ材線虫病」といいます。 それでは、マツノザイセンチュウは、どのようにして松枯れを起こすのでしょうか。

マツノザイセンチュウは、動物に寄生する回虫、ぎょう虫、十二指腸虫などと共に、線形動物門に含まれる線虫の一種です。
大きさは、メスの成虫で体長0.7~1.0mm、オス成虫は0.6~0.8mmになります。
メスは交尾後一生をかけて約100個の卵を生み、幼虫は4回目の脱皮を経て成虫となります。
松の樹脂道の中で産卵→幼虫→成虫→交尾→産卵の段階をわずか4~5日で終わり、松の中で爆発的に増え続けます。

マツノマダラカミキリは松の樹皮下に夏から秋にかけて産卵し、生まれた幼虫は第4期幼生状態で越冬して翌春、蛹化した後、暖かい地域では5月頃から成虫となり羽化します。
羽化後約1週間で枯れた松から脱出した成虫は、他の健康な松へ飛来し、新しい枝の皮を食べます。(後食という。)
その後、オス、メスとも約2~3週間で性的に成熟し、交尾・産卵を始めます。産卵するのは衰弱或いは枯れた直後の松ばかりで、メス1頭の産卵数は100個前後とされています。
松枯れの仕組み
5~8月
枯れた松から脱出したカミキリ成虫が健全な松の若枝を後食(※)します。その時にマツノザイセンチュウがカミキリ成虫の体内から離れ、後食の傷口を経由して松樹体内に侵入します。 ※後食 : カミキリ成虫が体を熟成させるために、松の若枝を食べること
7~10月
松樹体内でマツノザイセンチュウが増殖・移動した結果、健全な松に、樹脂分泌の停止、通水障害の症状が現れ、外見にも針葉の黄化・萎凋が現れます。
7~8月
衰弱した松から発生するテルペンやエタノールなどによりカミキリ成虫が引き寄せられ、衰弱もしくは枯死した松樹皮下に産卵します。1回に1個ずつ合計で100個程度の産卵を行います。
10~5月
松樹皮下で孵化したカミキリ幼虫は、孵化直後から松の内樹皮を摂食します。3回脱皮して4齢まで成長しますが、3齢幼虫の時に材内に蛹室を作り、4齢幼虫が蛹室内で越冬します。
5~6月
カミキリ蛹室の周りにはマツノザイセンチュウが多く集まります。翌年春にカミキリがさなぎから成虫に羽化しますが、羽化してから脱出までの間にカミキリ体内にマツノザイセンチュウが乗り移ります。
5~7月
体内にマツノザイセンチュウを持ったカミキリ成虫が、枯死した松から脱出し、周辺の健全な松に飛翔、後食して、マツノザイセンチュウを伝播していきます。